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ウォーレン・バフェットからみる株式の税金

ウォーレン・バフェットからみる株式の税金

世界的に有名な投資家であり、経営者でもあるウォーレン・バフェットは、ビル・ゲイツに次ぐ、世界トップの資産家です。
ですが、数年前にバフェットの所得税率は17%程度と低いことが話題になりました。
なぜ、投資家は多くの資産を持ちながらも税率を低くできるのか。
それは、有価証券に係る税制に関係がありそうです。

ウォーレン・バフェットと税金

ウォーレン・バフェットの資産は、その99%が自分で経営しているバークシャー・ハサウェイの株式となっています。
バークシャー・ハサウェイは主にウェルズ・ファーゴやコカ・コーラ、アメリカン・エクスプレスなどの企業の株を保有しています。
他にもHJハインツなどの会社を買収するなど、主に企業への投資をする投資会社です。

企業が株式投資をする際の(個人投資家の場合も同じですが)、株価の値上がり益については、売却をしない限り課税されないことがほとんどです。

つまり、株式のバイアンドホールド(買ったら保有し続ける)の場合には、たとえ何十倍に株価が上昇していたとしても、課税されるのは配当金に対してのみということになります。
おそらく、ウォーレン・バフェットもこの辺の税制をうまく使っている可能性がありそうです。

日本での有価証券とくに株式にかかる税制

ここからはかなり専門的な話になります。
日本では、法人が有価証券を購入した場合、その購入した目的に応じて①満期保有目的有価証券、②売買目的有価証券、の2つに大きく分かれることになります。

このうち、税法上時価評価が必要となり、株価の上昇による評価益が課税対象とされるのは②売買目的有価証券になります。

法人税法上の売買目的有価証券は、「令第119条の12第1号《売買目的有価証券の範囲》」にて、「専担者売買有価証券」であることや、「短期売買目的の有価証券を取得する旨を財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載したもの」とされています。

「専担者売買有価証券」とは、「短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で行う取引に『専ら従事する者』が短期売買目的でその取得の取引を行つたもの」とあるので、株式の場合には、社内に株式の売買を専門で行っている人がいる場合ということになります。

つまり、一般的な中小企業では売買目的有価証券に該当するような取引は、あまり見られないのではないかと思われます。

売買目的有価証券でなければ、会計処理上も時価評価はいらない?

税法上は、有価証券とくに株式の取り扱いについて、売買目的有価証券でなければ、帳簿上取得価額のままでも問題がなく時価評価にする必要はありません。

ただ、中小企業会計指針(中小企業会計要領とは別)では、「市場価格のある株式を多額に保有している場合」には時価で評価するとなっていますし、時価で決算書上表示させたいという場合には、有価証券を時価評価で決算書に反映させるために、評価差額を損益に影響がでないように純資産の部に直接計上することで、貸借対照表上の有価証券を時価で表示します。

仕訳
有価証券 ○○円 / その他有価証券評価差額金 ○○円(純資産の部)
         / 繰延税金負債       ○○円

株式投資による法人の純資産と税金

投資した株式の評価額が上昇することによって、決算書上の有価証券を時価評価した場合、評価益は課税されることなく(売買目的有価証券ではない場合)、会社の純資産額を増やしていくことなります。

つまり、ウォーレン・バフェットのような基本的に売買を好まないバイアンドホールドの投資家は、ほとんど課税されることなく、資産を増やしていける可能性があるということになります。

ウォーレン・バフェットのような投資家が資産額のわりに税率が低いのには、このような理由がありそうです。

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